2016/07/26

低線量被ばくの発がんリスク解明に期待-「がん幹細胞」研究進展で

2016/07/26  電気新聞
http://www.shimbun.denki.or.jp/news/main/20160726_01.html


◆原子力業界、動向に注目

血液や胃、腸などの細胞を生み出す幹細胞と似た性質を持つ「がん幹細胞」を起源とした発がんメカニズムが近年提唱され、放射線防護の分野でも注目を集めている。国際放射線防護委員会(ICRP)は昨年12月に新たな勧告を出し、研究者に対し基礎研究の方向性を示した。今後、放射線発がんに関する幹細胞生物学の研究が進めば低線量被ばくによる発がんリスクについて、新発見が出てくる可能性がある。

再生医療の発展により、幹細胞と同じような性質を持つ「がん幹細胞」を起源とする発がんメカニズムが近年提唱されている。幹細胞は組織ごとの特定の部位に偏在し、自らと同じ幹細胞を複製する能力と、通常の組織の細胞を生み出す能力がある。「がん幹細胞」も同じようにがん細胞を増やし、がんが進行すると考えられている。これまで、がんはヒトの60兆個全ての細胞にあるDNAのどこかに傷が入ってがん細胞に変質、それが異常なスピードで増殖する病気と考えられていた。

幹細胞は「ニッチ」と呼ばれる微小環境の中でしか生きられず、数や寿命などが制限され、幹細胞同士がニッチの取り合いをしている。がん幹細胞も同様で、常に正常な幹細胞と競合し、負ければ排除されてしまう。また低線量被ばくの場合、放射線で傷ついた幹細胞と無傷の幹細胞が共存し、傷ついた幹細胞が「がん幹細胞」に変異する前に、競合によって排除される可能性が高い。こうして、がんの発生リスクが下がったり、組織への放射線損傷が蓄積されなかったりすると考えられる。

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