2015/07/15

自主避難者、戻るか移住か 「住宅無償」福島県が打ち切りへ

2015年7月15日 日本経済新聞 
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO89336820V10C15A7CC0000/

東京電力福島第1原子力発電所事故で、避難指示地域以外から県内外に避難する「自主避難者」をめぐり、災害救助法に基づく避難先の住宅の無償提供が2017年3月末で打ち切られることになった。避難者は今後、帰還か移住か判断を迫られる。福島県や国は「打ち切りで帰還を促し復興を加速させたい」との意向だが、避難者らは「生活が破綻する」と反発している。

自主避難者には公営住宅や民間住宅を借り上げる「みなし仮設」を含め住宅の無償提供が続いていたが、福島県は費用を負担する国と協議し「公共インフラの復旧や除染作業などが進み、生活環境が整ってきた」として打ち切りを決めた。一方で、新たな支援策として県内への引っ越し費用の補助や打ち切り後の一定期間の家賃補助などを検討している。

7月上旬、新潟市内で開かれた福島県の説明会には自主避難者約40人が集まった。打ち切りに理解を求める県の担当者らに対し、避難者からは「帰還ありきの支援策はおかしい」などと批判する声が上がった。

中学生の子供2人と福島県郡山市から避難する女性(41)は「もし子供の健康に影響が出れば取り返しがつかない。事故前の放射線量に戻らなければ帰れない」。郡山に残る夫との二重生活で、貯金を切り崩しながら暮らす。女性は「さらに家賃負担が加われば生活が破綻する」と嘆く。

避難者支援に携わる一般社団法人「FLIP」によると、新潟の自主避難者の4割程度が、福島に残る夫と離れて暮らす母子避難者という。代表理事の村上岳志さん(39)は「住宅の無償提供が終われば、夫と離婚して生活保護を受けるしかないと考え始めている人もいる」と明かす。

避難指示が解除された地域の住民も仮設住宅などに住み続ければ自主避難扱いになる。仮設住宅の男性(64)は「周辺の山林の放射線量はまだ高い。今も帰れる状況ではないのに……」と憤る。

福島県南相馬市から茨城県に避難する自営業の男性(50)は「いつかは打ち切られることは分かっていたので、自立して暮らせるよう準備してきた。ただ、自立できる時期は被災者一人ひとり異なる。個別事情に応じた支援も必要ではないか」と話している。

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