2015/03/16

避難者の心のケア不十分 自治体職員支援も課題 福島で国際専門家会議


2015/03/16 福島民報
https://www.minpo.jp/news/detail/2015031621574


東京電力福島第一原発事故による健康への影響を国内外の専門家が検証する第4回福島国際専門家会議が15日、福島市の福島ビューホテルで開かれ、避難者の心のケアや介入支援が不十分との指摘が相次いだ。震災と原発事故から4年を経てなお、震災(原発事故)関連死対策の難しさと継続支援の必要性が指摘された。避難者を支援する側や避難区域が設定された自治体職員のサポート体制の強化を新たな課題として共有した。
 
国連防災世界会議に合わせた国際会議で福島医大の主催、県と国際放射線防護委員会(ICRP)、長崎大、広島大、日本財団の共催。「福島原発事故から4年-県民健康調査と県民の安全と安心に向けて」をテーマに、国内外の研究機関などから約180人が参加した。
 
福島医大災害医療支援講座の特任助教で雲雀ケ丘病院(南相馬市)の堀有伸副院長はこれまでの診断を踏まえ「本来ならば治療を受けるべきうつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の住民が適切なケアに結び付いていない可能性がある」と指摘。継続的なメンタルヘルスの必要性を訴え、「支援者の疲弊や脱落の傾向もあり、配慮が必要」と警鐘を鳴らした。
 
福島医大災害こころの医学講座の前田正治主任教授は、避難者ら21万人を対象にした精神保健・生活習慣の調査報告で、「PTSDやうつ病の住民は減少傾向にあるが、依然として高い値で推移している」として、関連死に結び付く可能性の高い自殺や過剰な飲酒などを予防するためのさらなる働き掛けの必要性を強調した。
 
前田教授は被災自治体職員のうつ病有病率が15・2%に上った調査結果も紹介。「不透明で希望を持ちにくい状況下で働き、住民の強い怒りにさらされたこと」などが原因と分析した。避難生活や家族との別離を余儀なくされている職員の相談環境の整備なども求められているとした。
 
総合討論の座長を務めた福島医大の山下俊一副学長は終了後、「(震災と原発事故から)4年が経過し、被災者のケアをする人が疲れてきているので、その対応や制度づくりが新たな課題になる」と語った。
 
避難生活の長期化などで体調を崩し、命を落とす被災者は増え続けている。県内の市町村が関連死と認定した死者数は13日現在、1885人に上り、震災や津波で亡くなった「直接死」を上回っている。県は関連死を防ぐため、県内の仮設住宅や借り上げ住宅での見守り活動などを担う「生活支援相談員」を現在の約200人から400人に倍増する。

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