2015/02/10

福島の今の声 東京に届け 在住者招き「トーク」3年


2015年2月10日 東京新聞より
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015021090065934.html

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から間もなく四年。震災被害の風化が懸念される中、福島に住む人たちを招き“被災地の今”を都会に届ける試みを続ける作家がいる。「メディアやネットでは得られない、現地の空気感を伝えたい」との思いで開く会は来月で三年を迎える。 
 企画しているのは東京都中野区の渡辺一枝(いちえ)さん(70)。新宿区にある貸しスタジオ、神楽坂セッションハウスで二〇一二年三月から、三カ月に一度、福島県在住者らを都内に招き「トークの会『福島の声を聞こう!』」を開く。
 震災後、何かできることはないか探し、一一年八月から福島県南相馬市や飯舘村に毎月通い、地元のボランティア組織を手伝って物資を配達。仮設住宅で暮らす女性に手芸の講習会なども開いた。
 メールマガジンや雑誌などで現地の声を伝えてきたが「道路や建物など見かけの復興は進むが、人の暮らしの問題はより個別になり見えにくくなっているのではないか」との思いとともに「私の言葉を通すと、何かが違う」と感じたのが会を始めた理由だ。
 夫で作家の椎名誠さんも陰の協力者。「毎月福島に行く私を快く送り出してくれる」と明かす。
 「放射能で死んでもいいから、パパと一緒にいたいと言われた」。昨年十二月の会では、原発から二十数キロ圏内の南相馬市に住むNPO法人に勤務する三十代の男性が事故後の家族の苦しみを話した。
 岩手県内の妻の実家へ避難させた小学一年生の娘が、離れ離れになることに泣いたという。
 貸しスタジオは会場を無償で提供してくれるため、会への参加費千五百円は全額、招いた講演者に寄付している。
 これまで浪江町の酪農家、飯舘村から避難先の福島市でカフェを再開した女性、行方不明になったままの家族を思いながら消防団など地域活動に励む南相馬市の男性ら約十人が体験を語った。
 毎回六十~百人が聞きに訪れる。「外から『そんな所にいないで安全なこっちにおいでよ』と言うのは簡単だけど、それでいいのかな」
 そんな思いで話をまとめた本「福島の声を聞こう!」(オフィスエム)も出版された。
 渡辺さんは毎週金曜日に官邸前で開かれる脱原発デモにも足を運ぶ。
 「現地では食べ物の安全に気を付けて子どもを守ろうとしているし、過疎化した地域を支えていこうと頑張っている。これからの闘いは、普通の生活の中にあるんじゃないかな」
 次回は三月三日午後七時から。講演者は福島県に通い、廃棄物問題に詳しい長野県中野市の環境学者、関口鉄夫さん。福島で生活する人々の声に、これからも耳を傾け続けるつもりだ。



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