2015/01/10

先天異常新生児全国と同等…県の調査母親安心感/福島


 県内で東京電力福島第一原発事故後に生まれた約2万人を調べた県の調査で、先天異常の発生率が全国と大差なかったとの分析結果は、県内の母親たちに一定の安心感を与えている。子育ての現場では、母親らを精神的に支える取り組みが続いている。

 「福島で出産しても大丈夫だという実感はありましたが、県の調査はその裏付けになります」。昨年9月に福島市で次男を出産した同市の歯科医、蓬田則子さん(31)は、寝息をたてる次男に目をやりながらほほ笑んだ。

 蓬田さんが同市で長男を産んだのは、原発事故翌月の2011年4月。同市の放射線量は原発周辺の自治体ほど高くはなく、避難指示も出なかったが、それでも「おなかの子供に影響が出る」「母乳が汚染されている」とのうわさが飛び交い、心配でたまらなかったという。

 知り合いの母親は次々に県外などへ自主避難して行った。東日本大震災直後の断水で、給水を受けるために長時間、屋外で並んだことを後悔した。12年10月には心配が募り、自費で内部被曝検査を受けた。

 長男は元気に育ち、友人たちが産んだ子供たちにも異常はなかった。蓬田さんは「不安が完全になくなったわけではありません。国や県は将来的な発がんリスクなどについてもきっちり調べて、さらに安心させてほしい」と訴える。

 県の調査では、11年度から13年度(中間集計)までの先天異常の発生率は2・35~2・85%で、日本産婦人科医会がまとめた12年の全国の発生率(2・34%)と大きな差はなかった。早産や低出生体重児の割合も全国的な傾向と変化はみられなかったという。

 母親を支え、不安を和らげるために、県助産師会は県の委託で母子支援事業を続けている。相馬市の助産師、宮原けい子さん(58)はこの事業に取り組む1人だ。震災直後の11年7月から、同市周辺に住む出産間もない母親らを訪問し、悩みなどを聞いている。里帰りした同市の実家で宮原さんの訪問を受けた会社員徳沢麻里さん(24)は昨年10月、長女を出産した。母乳の量を心配する徳沢さんを、宮原さんは「全然問題ないよ」とにこやかに励ました。

 徳沢さんは12年10月に長男を出産した当時は不安にさいなまれていたというが、宮原さんが開催する子育てについての勉強会に参加し、「食べ物や線量の高い場所に気をつければ大丈夫」と次第に実感できるようになったという。

 宮原さんによると、原発事故直後に会った母親の中には、訪問時に宮原さんの顔を見るなり泣き出したり、家に閉じこもったりする人が目立ち、ストレスからか母乳が出にくい人も多かったという。宮原さんは、放射線の健康影響への心配が背景にあると感じており、「国などは客観的なデータをさらに積み重ねて、母親が安心できる材料を提供すべきだ」と訴えている。

http://www.yomiuri.co.jp/local/fukushima/news/20150109-OYTNT50127.html
2015年01月10日
読売新聞

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