2014/07/04

子どものCT検査 被曝減らす工夫(日本医学放射線学会の方針)

日本ではこれまでほとんど問題にされてこなかった医療被ばくですが、実は、海外ではすでに、なるべく被ばくを減らすよう工夫されていたり、呼びかけがされてきました。日本でもようやく、学会での指針がまとまったという報道です。方針には、5分以上意識がないとか、3回以上嘔吐するなどの目安が盛り込まれています。CTによる被ばく、子どもの場合で「1.3〜14ミリシーベルト程度」も被ばくするということですから、受診するほうもこの方針を知って、不必要に受けることのないようにしたいものです。

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子どもが頭を打った時などに行うCT(コンピューター断層撮影)検査。頭の中の様子がひと目でわかるため、救急現場でよく行われているが、日本医学放射線学会などは「損傷のリスクが低い場合にはCT検査を行うべきではない」などとする指針をまとめた。
 CT検査は放射線を使って体の内部の断面を映し出す。撮影する体の部位や体格によって放射線の被曝量は違うが、子どもの場合は1・3~14ミリ・シーベルト程度とされる。 発がんするリスクが増えるのは、一度に被曝する量が100ミリ・シーベルトを超えた場合とされ、これよりは低い。ただ、国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)放射線診断科医長の宮崎治さんによると、CT検査程度の低い被曝でがんを発症するかどうかは、はっきりしていない。
 そこで、特に放射線の影響を受けやすい子どもについては、被曝量を減らすための検証が世界中で進んでいる。海外では、子どもに行われたCT検査を検証した結果、「30%以上は不必要」「3分の1は他の検査に変更可能か、不要」などの研究がまとまっている。
 こうした流れを受け、国内でも日本医学放射線学会などが「画像診断ガイドライン(指針)」を昨年改定。子どもの頭のけがの大部分を占める軽症の場合、「5分以上意識がない」「3回以上の 嘔吐がある」などの米国の検査基準を示し、この基準などを参考にリスクが低いと診断された場合、CT検査を行うべきではないとした。
 頭のけがと並んで子どもの救急患者に多い急性虫垂炎(盲腸)の診断も、できるだけCTではなく、超音波検査を行うこととした。
 一方、CT検査が必要な場合でも、低い放射線量で撮影した画像を、医師が診断できる高画質のものにコンピューターで再構成する技術などが進み、検査による被曝は減りつつある。
 子どもの場合は体格に応じた放射線量を設定することで、さらに被曝を減らせる。国立成育医療研究センターでは、赤ちゃんから中学生くらいまでの人体模型を使ってそれぞれ実際に撮影、画質と被曝量を比べ、体格ごとの最適な放射線量を決めている。
 米国では、各病院がCT検査の際に機械に表示される放射線量を登録し、集計結果を基に基準値を決め、これに比べて放射線量が多い病院は設定を見直すなどの取り組みが行われている。
 国内でも日本放射線技術学会や日本医学放射線学会が、それぞれ全国の主な病院を対象にCT検査時の放射線量の調査を始めた。愛知医大放射線科教授の石口恒男さんは「これまで日本では全国的なデータがなかった。調査に基づいて日本の基準値を決め、CT検査の被曝量を適切に管理できるようにしたい」と話す。
 宮崎さんは「各病院は診断のレベルを落とさない範囲で、できるだけ被曝量を減らす努力が必要」とし、親の側にも理解を求める。
 明らかに問題がない場合でも親からCT検査を求められることもあれば、逆に医師が必要と判断しても、放射線への不安からためらう親もいるという。「無用な被曝を避けるため、必要な場合にのみ検査しようとしていることを知ってほしい」と話している。
(2014年7月3日 読売新聞)

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