2011/12/09

放射線教育:文科省、電力系財団に副読本委託(佐賀で研修会も予定)

放射線教育:文科省、電力系財団に副読本委託

毎日新聞 2011年12月8日 15時01分
 文部科学省が、全国の小中高校生向けに新たに作った放射線教育の副読本を東京電力の西沢俊夫社長ら電力会社の経営陣らが役員を務める財団法人「日本原子力文化振興財団」(東京都港区)に作製の委託をしていたことが分かった。財団への委託は、東電福島第1原発事故前に入札で決定したが、同省は事故後も変更しなかった。電力業界とつながりの深い団体が教材作りに関与することに対し、識者からは「原発事故後の委託先としてふさわしくない」と批判の声が上がっている。
 副読本の改訂事業は東日本大震災直前の3月9日に一般競争入札で行われ、同財団が約2100万円で落札した。従来の副読本には原発について「大きな地震や津波にも耐えられるよう設計されている」などの記述があったため、文科省は4月に使用を中止。新たな副読本を作製することにしたが、委託先は変更せず7月に契約内容を見直し、事業費も経費の増加に伴い約3700万円に増額した。
 同財団は原子力の平和利用の啓発普及を目的に掲げ、10年度は収入総額約12億円の約4割が経済産業省や文科省など国からの受託費だった。常勤の専務理事は関西電力出身で、非常勤の副理事長4人のうち、3人も元福島第1原発所長ら電力会社出身者が占める。非常勤理事には、西沢社長や関西電力の八木誠社長も名を連ねる。
 文科省の担当者は、事故後も委託先を変えなかった理由について「放射線の知見は変わらない」と説明。電力業界との関係についても同財団は「副読本の内容に影響はない」とコメントする。
 副読本は同財団が事務局を担い、放射線の専門家や教員ら13人による作成委員会が執筆・編集した。放射線の基礎知識や利便性に特化した内容となり、原発事故は前書きで触れただけだった。委員長の中村尚司・東北大名誉教授は「放射線について正しく知る観点で作った。内容は委員会が事務局から独立して学術的にチェックしている」と話す。
 これに対し、NPO法人「原子力資料情報室」の伴英幸共同代表は、副読本の内容について「放射線との共存が前面に出され、危険性への認識が甘い」とした上で、委託先についても「原発を推進するための組織が従来通り受託するのは、妥当とは思えない。原発事故への反省が足りない」と批判している。



放射線の副読本、電力会社関連団体に委託 文科相が陳謝

12月9日朝日新聞

 文部科学省が10月に公開した放射線の基礎知識についての副読本が、電力会社の経営陣らが理事を務める財団法人に作成委託されていたことが分かった。中川正春文科相は9日の閣議後会見で「内容に影響はなかったと思うが、電力会社が中心になってつくっている団体への委託は適当ではなかった」と述べた。
 文科省によると、副読本改訂事業の一般競争入札は東日本大震災直前の3月9日にあり、「日本原子力文化振興財団」が約2100万円で落札した。原発事故を受けて内容を全面的に見直すことになり、事業費を約3700万円に増額したが、委託先は変えなかったという。同財団の常勤・非常勤理事には電力会社の社長やOBらも名を連ねる。
 文科省は「この財団が事務局役を担ったが、中身は専門家や教員らによる独立した作成委員会が執筆、編集した」と説明している。




放射線副読本指導例を紹介

高校長ら対象に研修会
ー佐賀県ー

県教委などは9日、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて文部科学省が作成した放射線に関する副読本について、県内の公立・私立高校の校長らを対象とした研修会を県庁で開いた。
 同省は10月、小学生、中学生、高校生用の3種類の副読本を新たに作った。県内の全学校に1冊ずつ送付されており、公立校では来年3月までに児童・生徒一人1冊ずつ配られる予定。
 研修会で県教委は「放射線の基本的な性質を学ぶことは重要」として具体的な指導例を紹介した。副読本を使うかどうかは、各校や市町教委が判断する。
 県教委などは今後、幼稚園長、小中学の校長や教諭向けの研修会も開く。
(2011年12月10日 読売新聞)

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